「福利厚生費って何が経費になるの?」と疑問に思っていませんか?この記事では、福利厚生費の定義や経費計上できる範囲、勘定科目一覧、交際費や消耗品費との違いなどを分かりやすく解説します。福利厚生費を適切に計上することで、企業は税負担を軽減し、従業員のモチベーションアップや優秀な人材の確保につなげることができます。福利厚生費の基礎知識から具体的な事例まで網羅的に理解することで、人事・経理担当者だけでなく、経営者や従業員にとっても有益な情報が得られます。ぜひ、最後まで読んで、自社の福利厚生制度を見直すきっかけにしてみてください。
1. 福利厚生費とは?
福利厚生費とは、企業が従業員のために支出する、慰安や医療などを目的とした給与以外の費用のことです。法令で義務付けられている「法定福利費」と、企業が任意で設定する「法定外福利厚生費」の2種類に分けられます。
1.1 1. 法定福利費
法定福利費とは、労働基準法や健康保険法など、法律によって企業に負担が義務付けられている福利厚生費です。具体的には、以下のものが挙げられます。
- 健康保険料(企業負担分)
- 厚生年金保険料(企業負担分)
- 雇用保険料(企業負担分)
- 労災保険料
- 介護保険料(企業負担分)
これらの法定福利費は、従業員の給与から天引きされるものと、企業が全額負担するものが含まれます。いずれも、従業員が安心して働くための基盤となるものです。
1.2 2. 法定外福利厚生費
法定外福利厚生費とは、法律上の義務ではなく、企業が任意で設定する福利厚生費です。従業員の満足度向上や企業の魅力向上を目的として、幅広い福利厚生制度が存在します。代表的なものとしては、以下のようなものが挙げられます。
種類 | 内容 | 例 |
---|---|---|
住宅関連 | 従業員の住居に関する費用を補助するもの | 住宅手当、家賃補助、社宅・寮の提供 |
食事関連 | 従業員の食費を補助するもの | 食事補助、社員食堂の運営、昼食費補助 |
健康・医療関連 | 従業員の健康増進や病気予防のための費用を補助するもの | 健康診断、人間ドックの補助、インフルエンザ予防接種補助 |
スキルアップ・自己啓発関連 | 従業員のスキルアップや自己啓発を支援するもの | 資格取得支援、研修制度、書籍購入補助 |
リフレッシュ関連 | 従業員の休暇やリフレッシュを支援するもの | 社員旅行、レクリエーション活動、旅行費用補助 |
慶弔関連 | 従業員の結婚、出産、死亡などの際に支給するもの | 慶弔見舞金、出産祝い金、弔慰金 |
その他 | 上記以外の福利厚生 | 通勤手当、育児・介護支援制度、従業員割引制度 |
法定外福利厚生費は、企業の規模や業種、経営状況によって大きく異なります。近年では、従業員の多様なニーズに対応するため、従来の福利厚生に加えて、柔軟な働き方を支援する制度や、ワークライフバランスを重視した制度を導入する企業も増えています。
福利厚生費は、従業員にとってより働きやすい環境を作るだけでなく、企業にとっても優秀な人材の確保や定着率向上、生産性向上などの効果が期待できます。企業は、自社の経営理念や事業内容、従業員のニーズなどを踏まえ、適切な福利厚生制度を設計・運用していくことが重要です。
【参考】国税庁
2. 福利厚生費と交際費・消耗品費との違い
福利厚生と混同されやすいものに、交際費や消耗品費があります。
国税庁の法令解釈通達では、交際費を下記のように定義しています。
つまり、主に顧客や取引先への接待や贈答などが交際費の対象となります。一方、法定外福利厚生費は従業員に対する費用です。
2.1 交際費との違い
福利厚生費と交際費の大きな違いは、費用の支出対象です。
項目 | 福利厚生費 | 交際費 |
---|---|---|
支出対象 | 従業員とその家族 | 顧客や取引先など、事業関係者 |
目的 | 従業員の労働環境の向上や生活の質の向上 | 事業関係者との良好な関係の構築・維持 |
経費計上 | 一定の要件を満たせば全額損金算入可能 | 原則として損金算入不可(一部例外あり) |
福利厚生費は、従業員がより働きやすい環境を作るために使われる費用であるのに対し、交際費は、あくまでも事業を円滑に進めるための費用という点が異なります。 福利厚生費と交際費を誤って計上してしまうと、税務調査の際に指摘を受ける可能性もあるため注意が必要です。
2.2 消耗品費との違い
消耗品費は、筆記用具やファイルといった業務に関わる消耗品の購入費用を指します。法定外福利厚生費とは、「業務に直接関わる費用か否か」という点で違いがあります。
項目 | 福利厚生費 | 消耗品費 |
---|---|---|
費用対象 | 従業員の生活の質向上や労働意欲の向上につながるもの | 業務遂行上、必要な消耗品 |
費用負担 | 会社が負担 | 会社が負担 |
経費計上 | 一定の要件を満たせば全額損金算入可能 | 全額損金算入可能 |
例えば、従業員が業務中に利用するボールペンやノートなどの購入費用は、消耗品費として計上します。 一方、従業員が自由に利用できるウォーターサーバーの設置費用や、従業員がリフレッシュできる休憩スペースの設置費用などは、福利厚生費として計上します。 福利厚生費は、従業員の労働環境の向上や生活の質の向上を目的とした費用であるのに対し、消耗品費は、業務を遂行するために必要な費用であるという点が異なります。
なお、法定外福利厚生は、各企業によって制度内容が異なること、また法律による定めがないことから、福利厚生への該当可否の判断が困難なケースもあります。福利厚生制度をあらためて確認し、福利厚生費として正しく計上されるものか見直してみましょう。
3. 福利厚生費を計上するための3つの要件
福利厚生費が税務上の費用として認められるためには、次の3つの要件をすべて満たす必要があります。これらの要件を満たさない場合は、福利厚生費ではなく、給与扱いとなったり、交際費として計上する必要が生じるケースもあるため注意が必要です。
3.1 1. 全ての従業員が対象であること
福利厚生費として計上できるのは、全ての従業員が対象の制度と定められています。役職や雇用形態、勤続年数などに関係なく、全ての従業員が平等に利用できるものでなければなりません。一部の従業員のみが利用できる制度の場合、福利厚生費とは認められません。一部の従業員のみを対象とする場合は、給与とみなされ、所得税や社会保険料の対象となる可能性があります。
例えば、
- 管理職の従業員だけに支給される住宅手当
- 勤続年数が長い従業員だけに適用される旅行補助
などは、福利厚生費として認められません。ただし、
- 業務の性質上、特定の資格を必要とする従業員への資格取得支援
- 特定の部署の従業員のみが参加する研修旅行費用(他の部署の従業員も平等に参加できる機会が設けられている場合)
などは、福利厚生費として認められる可能性があります。重要なのは、特定の従業員を優遇する目的ではなく、業務上の必要性や従業員の能力向上、労働環境の改善などを目的としているかどうかという点です。福利厚生制度を設計する際には、これらの点を踏まえ、税理士などの専門家に相談しながら進めることをおすすめします。
3.2 2. 金額に妥当性があること
福利厚生費として認められるためには、社会通念上、常識的な範囲の金額でなければなりません。高額なものの支給は、福利厚生費として認められないことがあります。福利厚生費の金額が妥当かどうかは、業種や企業規模、給与水準などを考慮して判断されます。高額すぎる場合は、給与とみなされるか、または交際費として計上する必要があるケースもあります。
例えば、従業員への誕生日プレゼントは、福利厚生費として認められるケースが多いですが、あまりにも高額なブランド品などは、福利厚生費として認められない可能性があります。また、従業員旅行も福利厚生費として認められる場合がありますが、海外旅行で豪華なホテルに宿泊するなど、その内容が贅沢すぎる場合は、福利厚生費として認められない可能性があります。福利厚生費として計上する際は、金額の妥当性について、過去の判例や税務当局の見解を参考にしながら、慎重に判断する必要があります。判断に迷う場合は、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
3.3 3. 現金・現物の支給ではないこと
福利厚生費として認められるためには、原則として、現金や現金に準ずるものの支給はできません。現金で支給してしまうと、従業員が自由に使うことができ、福利厚生本来の目的から外れてしまう可能性があるためです。福利厚生費として認められない場合は、給与として扱われ、課税対象となります。そのため、従業員への支給は、現金ではなく、物品やサービスの提供、施設の利用などの形で行う必要があります。
例えば、従業員に現金で支給するのではなく、図書券や映画チケット、テーマパークの入場券などを支給する、社員食堂や社宅などを設置する、などが考えられます。ただし、換金性の高い金券や商品券などは、現金と同様に扱われる可能性があるため注意が必要です。福利厚生費として計上する際には、現金や現物に該当しないかをしっかりと確認することが大切です。
参考資料:国税庁
4. 【勘定科目一覧】福利厚生費として計上できるものとできないもの
従業員への福利厚生として、さまざまな施策を検討できますが、経費として計上できるものとできないものがあります。ここからは、勘定科目別に福利厚生費として計上できるものとできないものをまとめます。
4.1 1. 住宅手当・家賃補助
住宅手当や家賃補助は、従業員の住宅費負担を軽減するために支給される福利厚生費です。 ただし、その支給要件や金額によっては、福利厚生費として認められないケースもあるため注意が必要です。
4.1.1 福利厚生費として計上できるケース
- 従業員が負担している住宅の家賃・ローン返済費用に対して支給する場合
- 会社が借り上げた住宅に従業員を住まわせる場合の費用
4.1.2 福利厚生費として計上できないケース
- 役員報酬として処理されている場合役員報酬として処理されている場合
- 従業員の家族が住む住宅の家賃を会社が負担している場合従業員の家族が住む住宅の家賃を会社が負担している場合
- 住宅手当の名目だが、実態が給与の一部である場合住宅手当の名目だが、実態が給与の一部である場合
住宅手当・家賃補助を福利厚生費として計上する際は、これらのポイントを踏まえ、適切な処理を行うようにしましょう。従業員への福利厚生として適切に運用することで、従業員の定着率向上や採用活動における企業の魅力向上にも繋がるでしょう。
4.2 2. 食事補助
食事補助は、従業員の食費負担を軽減するために提供される福利厚生費です。しかし、支給方法や金額によっては、福利厚生費として認められないケースもあるため注意が必要です。
4.2.1 福利厚生費として計上できるケース
- 従業員食堂の運営費や食事の無償提供従業員食堂の運営費や食事の無償提供
- 弁当の支給弁当の支給
- 食事券の支給(金額要件あり)食事券の支給(金額要件あり)
食事券を支給する場合、1ヶ月の金額が3,500円(税抜)以下で従業員が半額以上負担している場合に限り福利厚生費として計上できます。
4.2.2 福利厚生費として計上できないケース
- 食事代として現金支給している場合食事代として現金支給している場合
- 金額要件を超えている場合金額要件を超えている場合
食事補助は、従業員の健康や労働意欲の向上、企業イメージの向上に繋がる福利厚生です。福利厚生費として認められる範囲内で、従業員が利用しやすい制度設計を行いましょう。
4.3 3. レクリエーション
レクリエーション費用は、従業員のコミュニケーション促進やリフレッシュを目的としたイベントや活動にかかる費用です。福利厚生費として計上するには、以下の要件を満たす必要があります。
4.3.1 福利厚生費として計上できるケース
- 全従業員が参加対象であること全従業員が参加対象であること
- 業務時間外に行われること業務時間外に行われること
- 社会通念上妥当な金額であること社会通念上妥当な金額であること
- 現金支給ではないこと現金支給ではないこと
これらの条件を満たすことで、社員旅行や懇親会、スポーツ大会などの費用を福利厚生費として計上できます。ただし、一部従業員のみが参加する場合は福利厚生費として認められないため注意が必要です。
4.3.2 福利厚生費として計上できないケース
- 一部従業員のみ参加の場合一部従業員のみ参加の場合
- 高額な旅行や商品券の支給高額な旅行や商品券の支給
レクリエーションは、従業員のモチベーション向上や帰属意識を高める効果も期待できます。福利厚生費として認められる範囲内で、従業員が楽しめるイベントや活動を企画・実施しましょう。
4.4 4. 慶弔見舞金
慶弔見舞金は、結婚や出産、病気、死亡など、従業員のライフイベントや不幸があった際に支給されるお金です。福利厚生費として計上するには、社会通念上妥当な範囲内である必要があります。
4.4.1 福利厚生費として計上できるケース
- 結婚祝金結婚祝金
- 出産祝金出産祝金
- 傷病見舞金傷病見舞金
- 災害見舞金災害見舞金
- 弔慰金弔慰金
4.4.2 福利厚生費として計上できないケース
- 金額が社会通念上不相当に高額な場合金額が社会通念上不相当に高額な場合
- 特定の従業員だけに支給している場合特定の従業員だけに支給している場合
慶弔見舞金は、従業員への感謝の気持ちや励ましを伝える手段として重要な役割を果たします。福利厚生費として認められる範囲内で、従業員へのサポート体制を整えましょう。
4.5 5. 通勤手当
通勤手当は、従業員が通勤にかかる費用を会社が負担するものです。 従業員が会社に雇用されていることで発生する費用であるため、福利厚生費ではなく「賃金」に含まれます。 そのため、原則として全額経費計上できます。
ただし、自家用車での通勤の場合、通勤距離が2km以上の場合のみ、距離に応じて定められた金額が非課税となります。 2km未満の場合は、全額課税対象となります。
公共交通機関を利用する場合、通勤手当は、最も経済的かつ合理的な経路で計算された金額が非課税となります。
参考:国税庁|No.2585 マイカー・自転車通勤者の通勤手当
4.6 6. 研修旅行
研修旅行は、従業員のスキルアップや知識習得、モチベーション向上を目的として行われます。福利厚生費として計上するには、研修の目的や内容が業務に関連しているかどうかが判断基準となります。
4.6.1 福利厚生費として計上できるケース
- 研修旅行の内容が、業務に関連している場合研修旅行の内容が、業務に関連している場合
- 研修旅行の目的が、従業員のスキルアップや知識習得である場合研修旅行の目的が、従業員のスキルアップや知識習得である場合
4.6.2 福利厚生費として計上できないケース
- 研修旅行の内容が、業務と関連性が低い場合研修旅行の内容が、業務と関連性が低い場合
- 研修旅行の目的が、従業員の慰安や娯楽を目的とする場合研修旅行の目的が、従業員の慰安や娯楽を目的とする場合
研修旅行は、従業員の成長を促進し、企業の競争力強化に繋がる投資です。福利厚生費として認められる範囲内で、効果的な研修旅行を企画・実施しましょう。
4.7 7. 健康診断
健康診断は、従業員の健康状態を把握し、病気の予防や早期発見を目的としています。福利厚生費として計上するには、法定健診の範囲内であるか、任意健診の内容が業務の性質や内容に照らして適切である必要があります。
4.7.1 福利厚生費として計上できるケース
- 法定健診の費用法定健診の費用
- 業務の性質や内容に照らして適切な任意健診の費用業務の性質や内容に照らして適切な任意健診の費用
4.7.2 福利厚生費として計上できないケース
- 業務と関連性がない健康診断や人間ドックの費用業務と関連性がない健康診断や人間ドックの費用
- 特定の従業員だけに健康診断を受けさせている場合特定の従業員だけに健康診断を受けさせている場合
健康診断は、従業員の健康を守り、企業の生産性維持にも繋がる重要な取り組みです。福利厚生費として認められる範囲内で、従業員の健康管理を適切に行いましょう。
5. 法定福利費の計算方法
続いて、法定福利費の計算方法について解説します。それぞれの保険料は、下記の計算式で算出できます。
5.1 1. 雇用保険料
従業員が失業したとき、あるいは雇用の継続が困難な場合に給付される雇用保険の保険料は、次の計算式で算出できます。
雇用保険料 = 賃金総額 × 雇用保険料率 × 負担割合
なお、負担割合は事業内容によって次のように定められています。
- 一般事業所=従業員5/1,000:事業者8.5/1,000
- 農林水産・清酒製造の事業=従業員6/1,000:事業者9.5/1,000
- 建設の事業=従業員6/1,000:10.5/1,000
また、雇用保険料率は年度によって異なる場合があるため、毎年度確認しましょう。令和5年度の雇用保険料率は、下記の通りです。
適用事業 | 事業主負担分 | 労働者負担分 |
---|---|---|
一般の事業 | 0.3% | 0.6% |
農林水産の事業 | 0.35% | 0.65% |
建設の事業 | 0.45% | 0.65% |
5.2 2. 厚生年金保険料
被保険者が高齢になったとき、あるいは障がいを負った際などに年金や一時金を支給する厚生年金の保険料は、次の計算式で算出できます。
標準報酬月額(標準賞与額)× 厚生年金保険料率(18.3%)× 1/2
厚生年金保険料率は、労使折半のため、1/2を乗じています。なお、全国健康保険協会では、標準報酬月額から健康保険料および厚生年金保険料を確認できる保険料額表を毎年度発表しています。
出典:全国健康保険協会「令和5年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」
5.3 3. 健康保険料
病気やケガ、休業、死亡などに備えられる公的な医療保険制度である健康保険の保険料は、次の計算式で算出できます。
標準報酬月額(標準賞与額)× 健康保険料率 × 1/2
健康保険料率は、厚生年金と同様に労使折半のため、1/2を乗じています。健康保険料についても、厚生年金と同様に全国健康保険協会の保険料額表から確認できます。事業内容により、健康保険組合や共済組合に加入している場合があり、料率は異なります。
出典:全国健康保険協会「令和5年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」
5.4 4. 労災保険料
業務中・通勤中に起きた事故による病気やケガ、障がいなどに対して保険給付が行われる労災保険の保険料は、次の計算式で算出できます。
賃金総額 × 労災保険料率
労災保険料率は、事業の種類、規模、保険給付の状況などによって異なるため、業種や規模に応じた料率が適用されます。詳しくは厚生労働省の労災保険料率表から確認しましょう。
5.5 5. 介護保険料
従業員が40歳になると加入が義務づけられている介護保険の保険料は、次の計算式で算出できます。
標準報酬月額(標準賞与額)× 介護保険料率
介護保険料率は、全国一律の料率と、都道府県ごとに定められる料率を合わせたものになります。令和5年度の介護保険料率は、1.70%です。(協会けんぽの場合)
6. 一人当たりの福利厚生費の平均は?
福利厚生費は、企業の規模や業種、経営状況によって大きく異なります。しかし、自社の福利厚生費が妥当な水準であるか、他社と比較して充実しているかを知りたいと考える人事担当者や経営者は少なくないでしょう。そこで、この章では従業員1人当たりの福利厚生費の平均を紹介します。
厚生労働省が発表している「令和3年 賃金構造基本統計調査」によると、従業員1人当たり(規模5人以上)の年間の福利厚生費は以下の通りです。
規模 | 平均年間福利厚生費 |
---|---|
5~9人 | 1,069,000円 |
10~29人 | 1,114,000円 |
30~99人 | 1,181,000円 |
100~299人 | 1,270,000円 |
300~999人 | 1,362,000円 |
1000人以上 | 1,522,000円 |
この調査結果から、従業員1人当たりの年間の福利厚生費は、規模が大きくなるにつれて増加傾向にあることがわかります。また、業種別に見ると、以下の通りとなっています。
業種 | 平均年間福利厚生費 |
---|---|
建設業 | 1,316,000円 |
製造業 | 1,431,000円 |
卸売業、小売業 | 1,086,000円 |
宿泊業、飲食サービス業 | 744,000円 |
医療、福祉 | 963,000円 |
教育、学習支援業 | 1,091,000円 |
業種別では、建設業や製造業など、比較的に労働集約型の産業で福利厚生費が高くなる傾向にあります。福利厚生費は、企業の業績や従業員のニーズなどを踏まえて決定されるため、一概に平均値だけで判断することはできません。しかし、これらのデータは、自社の福利厚生制度を見直す際の参考になるでしょう。
6.1 福利厚生費の内訳
福利厚生費は、法定福利費と法定外福利費に分けられます。法定福利費とは、法律で企業に負担が義務付けられている福利厚生費です。健康保険料や厚生年金保険料、雇用保険料などが挙げられます。一方、法定外福利費とは、企業が任意で従業員に支給する福利厚生費です。住宅手当や家族手当、通勤手当、退職金などが挙げられます。
日本経済団体連合会が2020年に実施した「第64回 福利厚生費調査結果報告」によると、従業員1人当たり1か月あたりの福利厚生費の内訳は以下の通りです。
区分 | 平均費用 |
---|---|
法定福利費 | 84,394円 |
法定外福利厚生費 | 24,125円 |
合計 | 108,519円 |
この調査結果から、福利厚生費全体に占める法定福利費の割合が高いことがわかります。法定福利費は、企業にとって大きな負担となりますが、従業員の生活を守る上で重要な役割を果たしています。
6.2 福利厚生費の動向
近年、企業間競争の激化や従業員の価値観の多様化などを背景に、福利厚生制度の重要性が高まっています。企業は、従業員の満足度を高め、優秀な人材を確保・定着させるために、従来の福利厚生制度に加えて、従業員のニーズに合わせた新しい福利厚生制度を導入する動きを見せています。
例えば、従業員の健康増進を目的とした福利厚生制度や、ワークライフバランスを支援する福利厚生制度、スキルアップを支援する福利厚生制度などが注目されています。福利厚生制度は、企業にとってコストであり、利益を圧迫する可能性もあります。しかし、従業員のモチベーション向上や生産性向上、企業イメージの向上など、多くのメリットをもたらす可能性も秘めています。福利厚生費の平均や動向を踏まえ、自社の経営戦略や従業員のニーズに最適な福利厚生制度を検討していくことが重要です。
7. まとめ
福利厚生費は、従業員の労働意欲や企業への帰属意識を高め、結果として企業の成長へと繋がる重要なものです。しかし、福利厚生費と混同されやすい勘定科目もあり、経費計上には注意が必要です。福利厚生費を経費として適切に処理するためには、要件を満たしているか、どの勘定科目に該当するのかをしっかりと確認することが大切です。従業員満足度向上と健全な経営のためにも、適切な福利厚生制度の設計と運用を行いましょう。
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